完璧執事の甘い罠
いい人だと思うけれど。
それでもやっぱり、私が好きな人はジルで。
ジル以外いないの。
「故郷が恋しくなってしまった?」
「・・・そうなのかも、知れません」
それがジルの事だなんて言えなくて。
エリックさまの思うままそう頷いた。
手は無意識に首のネックレスに触れ。
ジルへの想いだけが募っていく。
なにを見ても、なにを食べても、なにを聞いても。
全て色褪せて思えるのは。
きっとここにジルがいないから。
側にいてくれるのが、彼じゃないから。
こんなにも。
私、ジルなしでは生きていけないほどになってしまっていたんだ。
「でも、本当に綺麗です。ここに来れて、よかった」
「・・・そう。そう言ってもらえるとうれしいよ」
どうしてうまくできないんだろう。
覚悟はしているはずなのに。
どうして行動も、心も、それに伴わないの。