完璧執事の甘い罠
「前、キミにプロポーズに似たようなことを言ったことがあったの、覚えている?」
「・・・あ、はい。もちろん」
「あれだって本気だった。本当に、キミの事を気にいって、そうなれたらって思ったんだ」
エリックさまの手が躊躇いがちに伸びてきて、私の手に触れる。
「こんな風に、キミの意志を無視した結果は本望じゃない。君自身が僕を選んできてほしかった」
「エリックさま・・・」
「だから・・・、・・・なんだか、うまくいかないね」
言いかけた言葉をのみこんだように見えたエリックさまは、ははと軽く笑った。
私はそれ以上追及することはできず、なんの言葉もかけられないままただ小さく首を横に振るしかなかった。
私を想ってくれている。
そのことはとても嬉しい。
エリックさまは優しくて、こんな人に想ってもらえるなんてきっと幸せな事だろう。