完璧執事の甘い罠
政略的な意味合いが強いであろう王族の結婚。
それなのに、エリックさまは私の事を想ってくれている。
ちゃんと、心がある。
恵まれていると思う。
きっとこのまま結婚しても、幸せになれるだろう。
でも、満たされないのは。
完全に喜べないのは。
私の心を閉めるのが、エリックさまじゃないから。
――なんだかうまくいかないね
エリックさまの言葉を反芻する。
どうしてこんなにもうまくいかないのだろう。
全てを忘れてしまえれば、きっと私は幸せになれるのだろうに。
それができないのは。
私が、ジルの事を忘れたくないから。
ジルへの想いを消したくないと思ってしまうから。