完璧執事の甘い罠
現実?
バカ言わないでよ。
そんなの、受け入れたくない。
でも、現実が残酷で奇跡なんてものはないことは私が痛いくらいにわかってる。
受け入れたくなくても、現実は進んでいくことも。
私一人、なんの躊躇いもなく現実は進んでいく。
残酷で救いのない世界。
「ひな様、母上の元に帰られたいのならなにも、死を選ぶ必要はないでしょう。来れたのですから帰る方法は何かあるはずです」
「・・・」
「探す手助けなら致します。ですから」
「ほっといてって言ってる」
なにも知らないくせに。
私はあそこに帰りたいわけじゃない。
「帰ったところで、ひとりだから」
「え・・・?」
「お父さんもお母さんも、・・・いないから」
泣きくずれた顔のまま体を起こす。
涙でぐしゃぐしゃなひどい顔をしていることだろう。