完璧執事の甘い罠
「王様からここに荷を届けてほしいと頼まれたのです」
「王様、お元気?」
「ええ。まだ現役で頑張ると意気込んでいらっしゃいますよ」
ジルと部屋の中のソファに並んで座りこれまでのことを語り合う。
「この数日、ひなさまのご逝去の話題で持ち切りです」
「あ・・・」
「国全体が悲しみに包まれています」
それを聞いてしまうと、申し訳ない気持ちになる。
「私も、・・・絶望を味わいました」
「え・・・?聞いてたんじゃないの?だから、ここにきたんじゃ?」
「いえ。私はなにも。塞ぎ込んでいた私を見かねて気分転換にとお使いを言い渡されたのです」
だから、あの涙だったのね。
悲しんでくれたんだ。
私が死んだと聞いて。
絶望して、なにも手に付かぬほど。
不謹慎だけれど、少しだけ嬉しい。
「ですが、姫の立場を捨てここで生きていかれるおつもりなのですね」
「・・・うん。ここから始めて、いつかジルにたどり着けたらって思って」
「私に?」
「姫と執事よりは執事と庶民の方がまだ近づくことができるかなって。政略結婚なんてしなくてもすむし」