完璧執事の甘い罠
「・・・だって、」
だってもう、立っていられない。
同情の瞳も、心のこもってない慰みの言葉も。
もう見たくない。聞きたくない。
私を本当に想ってくれる人なんて、いなかった。
「お二人は、そんな薄情な方なんですか?」
ポロポロと溢れてくる涙。
そんな人たちじゃない。
私が何もかも投げ出して、命を蔑ろにして会いに行けたとしても。
きっと、2人は喜んでなんかくれない。
そんな事、そんな事、わかってるよ。
「それでも・・・会いたい・・・」
会いたいの。
「ひな様・・・。今はまだいろいろと変わりすぎて動揺されているんです。今日はお休みください」
「・・・っ」
ジルが私を支え部屋の中に連れていく。
「ノエル。挨拶はまた改めてにしていただけますか」
「ああ」
ノエルは立ち上がると部屋を後にした。
ジルは私をベッドに横たえる。
布団を肩までかけてくれる。
「眠るまで側にいますので。安心してお休みください」