完璧執事の甘い罠
「ひな様、チョコレートはいかがですか?」
伺うような声。
ピクッと反応した私は、少しためらった後こっそりと顔を覗かせた。
「アルバーナ王国でしか食べられない特産品です。甘い中にほろ苦さがあって絶品ですよ」
「・・・食べる」
甘いものが大好きな私。
いくら体調が悪くて食欲がなくても、甘いものなら食べられるから、お母さんがよくプリンを買ってきてくれたりした。
甘くておいしいものならなんだって好き。
「はい!ぜひ!とてもおいしいので、食べてみてください!」
ヨハンは嬉しそうに声を張り上げる。
私は苦笑しながらベッドから身体を起こす。
「・・・ごめんね、ヨハン」
「はい?なにがでしょう?体調が悪いのは仕方がないことですから。食べられるものを食べられたらいいのです!」
屈託のない笑顔。
本気でそう思ってくれているんだってわかる。
その笑顔を見て、ようやく申し訳ないなって罪悪感が生まれた。
いつまで被害者面してるんだろう。
そんなの、無意味なのに。
この人たちにだって、関係のないことなのに。