完璧執事の甘い罠
いつまでも、現実から逃げて。
逃げて、嘆いて、ヒロインぶってばかり。
だって苦しい。
だって悲しい。
それでも、いくら嘆いたっていくら泣いたって。
2人が戻ってくることはないことも。
現実は進んでいくことも。
わかってたの。
「一番のおすすめはこちらです!これは、少し火で炙って溶かして食べるんですよ!準備しますね!」
「うん」
目の前に広げられるキラキラチョコレートの数々。
心が少し軽くなる感じがする。
ヨハンが用意してくれたチョコレートを口に放り込むと、甘さの中にほのかな苦味が広がる。
じんわり浸透するような優しい甘みの中で、頑固に縮こまっていた心が少しずつほぐれていくのがわかる。
「美味しい・・・」
「ですよね!僕もこれ、大好きなんですよ!」
「ふふっ」
あんまりにも熱く語るから、思わず吹き出してしまう。