完璧執事の甘い罠
「ジルが、そんな優しいこと言うかな・・・」
全く想像がつかない。
表情は変わらないし、冷たく厳しい言葉ばかり。
私が飛び降りようとしたあの時は、少しだけ必死そうに顔が歪んだくらい。
「ジルさまは、お優しい方です。執事や使用人たちをまとめ上げる腕の持ち主で。本当に尊敬に値するお方です」
「仕事、できそうだもんね・・・」
「できそうではなく、できるんです!」
目が輝いちゃってる。
ヨハンはすっかりジルに心頭してるんだな。
私にとってはただ冷たい人だけど、ヨハンにとってはそうじゃないのかな。
私には、本当によくわからないけれど。
でも。
少しは私の事考えてくれてるってことだろうか。
“仕事だから”かもな。
「次はどれを召しあがりますか?」
「そうだなぁ・・・」
少し前までの頑なな気分はすっかり抜け、私は次のチョコレートを選んだ。