完璧執事の甘い罠
賑やかで楽しそうな街の雰囲気から、私たちだけポツンと取り残されたような。
「賑わっている反面、治安が悪い場所もありますし、いろんな人が集まっている分危険は多いです」
「・・・ふぅん」
「治安の改善と、人々がより安心して生きられる国を作ることを、王様は目指して国づくりをしておられます」
国づくり、と言われたって。
いまいちピンとこないし。
「いずれ、ひな様もそれを受け継がれることになりますから」
「そんなの、よくわからない」
自分が幸せだと思えないのに、他人の幸せなんて目指せない。
姫だと決めつけられても、そんな自覚なんてないし。
「ひな様は、間違いなく王様の血を受け継ぐ、王族の血縁者です」
「だから、なに?私は今までそんな話お母さんから聞いた事もないの。名前が同じだけで決めつけられても困るわ」
どうしてこんな風に言いあわなくちゃいけないの。
ジルは、私のこと姫として扱わなくちゃいけないんだろうけど。
それがジルの仕事だから。
でも、そんなこと、私には関係ないのよ。