完璧執事の甘い罠
ノエルに信念があるように、ジルにも信念があるのかしら。
ジルの信念・・・。
いったい、どんなものだろう。
「次に進んでも?」
「あ、うん」
ジルがメガネを片手でクイッとあげ本を抱え直すのを見ながら、慌てて私も本に視線を戻す。
きりっとしたジルがメガネを整える姿は、とても様になっていて思わずドキッとしちゃったじゃないか。
ジルにドキッとするなんて、なんだか悔しい。
私ばかりが動揺するみたいでなんか、嫌だ。
「シーエン王国とは、以前も友好関係にあると申しましたね」
「うん。聞いた気がする」
「その歴史は古く、ダリウス王国との確執と同じく、100年ほどの歴史があります」
「へぇ」
「そもそも、シーエン王国の成りたちは・・・」
ジルのためになる授業はその後も続いた。
私は知ろうと必死でノートにペンを走らせる。
一生懸命になっていると、いろいろなまだ払拭できない想いとか、少しでも忘れられる気がした。