完璧執事の甘い罠


身体を動かすことは嫌いじゃないけれど、リズム感のない私はダンスレッスンが一番の苦手分野かもしれない。
ダンスもジルに教わっているのだけど、何度ジルのため息を聞いたことか。



ホールに向かい、ヒールの高い靴を履く。
これがまた慣れなくてふらつくんだ。



「用意は整いましたね」

「はい!」

「とりあえず最初は、ヒールで歩く練習から始めましょう」

「歩く練習?」

「歩けもしない靴でダンスなんてもってのほかでしょう」

「う・・・」




ごもっともです。
最初は履きなれた靴で足の運びを練習していた。
前回の最後からヒールを履いてやってみたのだけど、これがまた酷いのなんのって。
それもあってきっとヒールの練習からってなったんだろうな。




「床に一本の線を引いています。その上を真っ直ぐ歩いて行けるようになるのが、本日の目標です」

「まっすぐ・・・。が、頑張ります」




履いて立っている状態の今でもふらつくのに。
今までヒールのある靴なんて履いてこなかったから・・・。




< 62 / 357 >

この作品をシェア

pagetop