完璧執事の甘い罠
そのレッスンは、散々だった。
「うぎゃっ!」
何度も何度も無様に転げ、ヒールで歩くくらいの事が出来ないんだと自分が情けなく思える。
そして、ヒールで立っているだけでも体力を使うのかすっかりヘロヘロになっていた。
「ヒールで歩くくらいでどれだけかかっているんですか」
「だ、だって・・・」
ジルに呆れられ、ぐ、と唇を噛む。
ほんとだよ・・・。
ヒールで歩くくらい、別にお姫さまじゃなくてもできて当然くらいの事なのに。
そんな事も出来ないなんて・・・。
「ジルさま、お茶の用意をお持ちしました」
座り込んで落ち込んでいる私のもとに、ティーワゴンに乗せた紅茶とケーキを運んでくるメイド姿の女の人。
「ありがとうございます。あとは私が。下がっていいですよ」
「はい。失礼いたします」
恭しく礼をして下がっていくメイドさん。
せっかく女の人だったのに、話がしたかったな・・・。