完璧執事の甘い罠
認められたい
疲れた。
ダンスレッスンを何とか終え、疲れ切った体を引きずるようにして部屋に戻る。
ジルは所要だとかで今は一人だ。
あとから追いかけてくると言っていたけど、ジルだってずっと私につきっきりでレッスンしてくれて疲れているはず。
私は大丈夫だから来なくていいよって伝えたらよかったな。
でも、ジルの事だからそんな事を言ったって、それが私の仕事ですから、と言われるのがオチか。
仕事人間だもんな、ジルは。
「あ・・・」
トボトボと歩いていると、さっきホールに紅茶を運んでくれたメイドさんの姿を見つけた。
さっきは声かけられなかったけど、話しかけるチャンスだ。
仲よくなれるかもしれない。
身分とか私はよくわからないし、姫っていう自覚もまだ正直ないし。
話せばフランクになってくれるだろうか。
「ね、」
「どうだったの?お姫様、に紅茶届けたんでしょう?」
声をかけようとした瞬間、別の声が聞こえピタッと足を止めた。
見ると壁に隠れ見えていなかったけど他のメイドさんと一緒にいたらしい。
なんだ、取り込み中なんだ・・・。
邪魔したら悪いよね。