完璧執事の甘い罠


ジルは、トレイごと摩り下ろしたリンゴが入っているお椀を膝に乗せると、開いている手でスプーンを持ちリンゴを掬って私の口元に運ぶ。

ぼんやりとした頭で、差し出されるままに口をあけると優しい手つきで口の中に運ばれるスプーン。

リンゴの甘さが口の中に広がり、喉を通っていく。




「ゆっくり飲みこんでください」

「・・・ん・・・」

「大丈夫ですか?」




いつになく優しいジルの声。
なんだろう・・・。
悲しいわけじゃないのに、涙が出てくる。



「ひな様?お辛いですか?無理なら一度眠って落ち着いてからにしましょう」

「・・・違う・・・」



ジルが運ぼうとしていたスプーンをお椀に戻すと、私の頬を流れる涙をそっと手で拭ってくれる。
その手もとても優しくて、涙は止まりそうになかった。



「ひな様。泣かれると体力を消耗してしまいます。なにかあったのでしたら・・・」

「・・・お母さんも、」



しゃくりあげそうになりながら話始める。



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