完璧執事の甘い罠
「お母さんも、私が・・・熱だしたとき・・・、リンゴをすりおろしたやつをつくって・・・くれてた・・・。それ、思い出して・・・」
「・・・アリス様が・・・」
ジルがピクリと反応する。
それでも、平静を装うようにして表情には何も出さなかった。
「自分で・・・食べれるのに・・・甘えたりして・・・でも、お母さん・・・なにも言わずに食べさせて・・・くれて・・・。今の、ジル・・・みたいに」
「そうですか」
「・・・懐かしく、・・・なっちゃった」
「まだ、召し上がりますか?」
「うん・・・」
ジルは優しく話を聞いてくれ、そしてまた食べさせてくれる。
「こほっ、こほっ」
「・・・もうやめておきましょうね。お薬を飲んでお休みください」
「ジル・・・」
「はい」
薬も甲斐甲斐しく飲ませてくれたジルを呼ぶ。
ジルは表情は相変わらずの無表情だけど、声色だけは少しだけ優しく答えてくれる。
無意識かな・・・。
「・・・ジル、側にいて・・・くれる・・・?」
「・・・もちろんです。私は、ひな様の執事ですから」
優しい掌が私の頭を撫でる。
私は安心して、すっと眠りに落ちた。