完璧執事の甘い罠
「ジル、あの・・・ありがとう」
「なにがです?」
「なにがって・・・看病してくれたこと」
「言ったはずですよ。私はひな様の執事ですから、と」
あくまでも、ジルが私を気にかけるのはジルが私の執事だからで。
私が姫だからってこと。
そう考えた時、少し寂しさを感じた。
「食事、取れそうなら用意しますが」
「ん・・・お腹すいた」
「では、用意してきますね」
恭しく頭を下げ、ジルは部屋を出て行った。
あんな風に畏まってほしくない。
そんな願いは、ジルには無駄だろうか。
「なんだかなぁ」
ベッドにボフッと倒れこみ呟いた。
もっとジルにフランクにしてほしい。
素になって、もっといろんなジルを知りたい。
そんな思いを抱くようになるなんて、ね。
ジルが私を想ってくれる、護ろうとしてくれてるのがよくわかるからこそ。
その気持ちが、執事だからって言われることが寂しくて物足りなく感じてしまう。
そんなの、私のワガママで勝手な思いだってことくらいわかってるから、なにも言えない。