完璧執事の甘い罠


ジルが持ってきてくれた食事を食べ、一眠りすると、すっかり元気になった。
昼過ぎにはもう身体のだるさもなく、もう動いても大丈夫そうだ。

お医者さまにももう大丈夫だと言われたし、すぐにでもレッスンに戻りたかったのに、ジルに止められてしまった。




「つまんない・・・」

「あなたがそんなにも、勉強熱心だったとは。初めの頃のあなたに見せて差し上げたい」

「そ、それは言わないでよ」



ぶぅ、と不貞腐れる。
だって今は、頑張りたいんだもの。
頑張っていないと、私の生きる意味が。

認めてもらえないと。
私は。



「あなたの頑張りは私がよく知っております」

「ジル・・・」

「1日2日休んだ程度、問題ありませんから。ゆっくりお休みください」




口調も言い方も優しくなんてないのに。
なんだろう、優しさを感じる。
心がね、暖かくなるんだ。



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