完璧執事の甘い罠
「ジルってさ」
「はい?」
「優しいんだか、そうじゃないんだかわかりづらいよね」
「あなたはバカですか?」
そう言うところだってば。
心底呆れたような顔で言わなくてもいいじゃないの。
「私は事実を申し上げているだけ。優しさで言っているわけではありません」
「まぁ・・・そうでしょうね」
「あなたに立派な姫君になっていただきたい。そして、あなたはその方向へ進もうとしている。その手助けを精一杯したいと思っているだけです」
私が姫だから。
つまるところは、やっぱりそういう事なのだろう。
私の価値は、姫であること。
ジルにとっては、それだけの事・・・なのかな。
だって考えてみればそうだ。
だって、ジルは執事で。
それが仕事で。
仕事だから私の側にいてくれて。
仕事だから私の世話を焼いてくれて。
仕事だから・・・。
わかってるのに、どうしてこんなにも胸が痛いのだろう。