完璧執事の甘い罠

曇天



「ひゃぁぁぁ!!申し訳ございません!!!」




廊下に響き渡る悲鳴。
私は歩きを止め、その声の方を覗き見た。


私はこれからレッスンのためダンスホールへの移動中。
ダンスホールを目の前にしてのその悲鳴だった。



「はしたない声をあげないで。すぐに片しなさい。もうすぐ姫が・・・」




視線の先には、床に無残に粉々になった花瓶と花、そしてメイド姿の女の人が二人。
一人は身体をくの字に曲げて謝罪の姿勢、きっとこの人がさっきの悲鳴の主だろう。

そしてそのメイドさんに向かい合うようにして怒っているのが少し年配のメイドさん。
確か・・・、メイド長のシルビエさんだったかな。
前に一度ジルに紹介してもらった気がする。



そのシルビエさんは若いメイドさんに注意をしていたが、私の視線に気づいたのかハッと顔を青ざめさせた。




「ひ、姫様!申し訳ございません!すぐに片づけさせますので!」

「え・・・、あ、いえ。あの」

「は、はい」




あまりにすごい剣幕にたじろぎながらもチラチラと視線を花瓶に向ける。




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