完璧執事の甘い罠
「私の事、どれくらい聞いてる?」
「え?あ・・・、異世界におられ、最近戻られた王族の血を引く姫君だと」
「そう・・・。最近までね、ずっと逃げてばかりだったんだ。お姫さまって言われたって実感ないし。そもそも私は、世界からも逃げようとしてたから」
「世界から・・・?」
不思議そうに呟くエリシアちゃんをチラリと見て、笑って頷く。
私は視線を中庭の綺麗な花壇に向け話を続けた。
「でも、ようやく踏ん切りがついて、この世界で頑張ってみようって思って。自分が姫として少しでもできることがあるならしようって思って。ようやく、頑張り始めたところなの」
「そうでしたか・・・」
「うん。だから、私もお姫様としては新人。エリシアちゃんと一緒ね」
にっこりと笑ってそう言うと、エリシアちゃんは一瞬驚いたような表情を浮かべた後、少し戸惑ったように視線を反らした。
ちょっと熱く語りすぎちゃったかな。
恥ずかしいな。
「へへっ。じゃあ、私部屋に戻るね。エリシアちゃんも、頑張って」
「はい。ありがとうございます」
エリシアちゃんを残して、私はその場を立ち去った。
15歳のエリシアちゃん。
仲よくなれたらいいな。