完璧執事の甘い罠
「おええっ」
「ひな様、申し訳ありません・・・、私が、私が・・・」
ジルは、私の背中をさすりながら何度もそうやって謝る。
ジルが来てくれて、うれしいのに。
私の心は混乱していて、嫌悪感と恐怖感がぬぐえないまま。
こみ上げてくる気持ち悪さを全て吐き出して、出すものがなくなっても、嗚咽は止まらず。
消えてくれない触れられる感覚や、男の声がまだすぐそこで聞こえる気がする。
「城に、戻りましょう」
「俺が運ぶ」
「いえ、私が・・・」
「ジルが?・・・ジルがそういうなら」
ジルはそういうと、私の身体を抱え上げる。
私はビクッと身体を震わせる。
安心できるはずのジルなのに、なぜだか怖いと思ってしまった。