完璧執事の甘い罠
声をかけながら室内を見渡す。
ひな様の姿は、ない。
どこに行かれたのだろう。
バスルームを覗けどもそこにひな様の姿はない。
だが、水滴を見るとお風呂に入った形跡はあるようだった。
ざわつく胸を抑え、テラスへと向かう。
テラスの前でふと下を見ると、泥のついた足跡があちこちについていた。
「これは・・・!」
ただならぬことが起きたのだと。
瞬時に察知し、私はテラスに飛び出した。
辺りは薄暗く、ランプの灯りだけ。
恐らくそれ程時間は経ってはいないはず。
すぐにでも周囲を捜索し、手がかりを掴まなければ。
「誰か!すぐに騎士団を集めてください!」
廊下に出て叫ぶと、ざわざわと辺りが騒然とする。
私は拳を握りしめ、悔しさに唇を噛んだ。
護りきれなかった。