副社長は束縛ダーリン
彼は私を支配したい人
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五月のうららかな光の差し込む室内には、揚げたてのコロッケの食欲を誘う香りが立ち込めている。
ここはユキヒラ食品株式会社。
冷凍コロッケを主力商品とする、冷凍食品専門のメーカーで、私は本社の食品開発部に所属している。
着ている服はオフィススーツではなく、ブラウスとスカートの上に白い割烹着。
肩までの髪は、三角巾でスッポリと覆った出で立ちだ。
広さ八十㎡ほどのこの部屋には、ステンレスの調理台が四つあり、壁際には大型冷蔵庫がふたつと、調味料や食品添加物が整然と並んだスチールラックが五つ。
部屋の半分以上は料理教室のような空間だが、ミーティング用の大きなテーブルと普通のオフィスにあるようなデスクも八つ、ドアに近い側に並んでいる。
そのミーティングテーブルに、私を含めた男女八人が向かっていて、ただ今、新作コロッケの試食中だった。
「美味しいです。甘みが強いから、間違いなく子供は喜びますよ」
そんなありきたりな感想を述べた私に対し、正面に座る製作者の先輩女子社員、泉智子(いずみともこ)さんは、考え込むように「うーん」と唸る。
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