副社長は束縛ダーリン

店員に迷惑者扱いされ、かつ悠馬さんに支払いをしてもらったと聞かされたら、言い返そうとしていたひとりも黙るしかない。

三人は目配せし合ってから、そそくさと逃げるように店を出ていった。


「ご迷惑をおかけしました」と悠馬さんは店員に謝罪して、その隣で私も頭を下げる。


「いえ、おふたりはなにもされておりませんよ。
こちらこそ、せっかくのお誕生日でしたのに、楽しい時間を提供できず、申し訳なく思います」


謝ったのに謝られ。

お店の側にこそ非はないのにと、私は慌てて言った。


「私、とっても楽しかったです。お料理も美味しくて、このお店に来られて本当によかったです」


「ありがとうございます。ぜひ、またおふたりでお越しください。できる限りのサービスをさせていただきますので。
それと、余計なことかもしれませんが……私の目にも月とスッポンに映りましたよ」


ウィンクつきの褒め言葉に、思わず頬を熱くしたら、悠馬さんは不自然な咳払いをする。

私を引き寄せるように腰に手を回して、店を出た後に、「もうここには来ない」と言ったのは、独占欲の表れだろうか?

ただのお世辞なのに、ヤキモチまで焼いてくれるなんて、私はなんて愛されているのだろう……。


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