副社長は束縛ダーリン

いつの間にか眠りに就いていた私は、暗い寝室で、ふと目を覚ました。

ベッドサイドの置き時計を見ると、夜中の二時。

カーテンの合わせ目は十センチほど隙間があり、そこに少しばかり光量を落とした夜景と、小さな丸い月が見える。


隣には、私の背中を抱くようにして眠る悠馬さん。

腰に回された逞しい片腕を、そっと外して起きようとしたら、その手に力が加わった。

起こしてしまったのかと危ぶんだけど、そうではないようで、首の後ろには寝息を感じる。


『ちょっと、トイレに行くだけですよ』と、口に出さずに説明し、再びその手を外そうとしたら、今度はお腹の肉を、三本の指でつままれた。

夢でも見ているのか、フッと笑う声がして、こんな寝言まで。


「こぶ……ちゃ……」


こぶ茶?

悠馬さんには珈琲や紅茶の方が似合いそうなのに、一体どんなこぶ茶の夢を見ているの?


そう思い、おかしさに微笑んだ直後にハッとした。

こぶ茶じゃなく、『子豚ちゃん』と言ったんじゃ……。

お腹の贅肉をプニプニと触られていることでもあるし、きっとそうだ。

レストランで女性三人をやり込めてくれた悠馬さんだけど、本当は彼も、私のことを子豚だと思っていたのでは……。

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