副社長は束縛ダーリン

ベッドから抜け出して、裸のまま寝室を出ると、トイレではなく洗面所のドアを開けた。

そこに置いてある体重計に用がある。

電子体重計を洗面所の真ん中に引っ張り出し、スイッチを入れた私は、緊張で手が汗ばんでいた。

最後に計ったのは確か三ヶ月ほど前で、最近は体重チェックしていない。

それは、自分でも太ったことに、薄々気づいていたからかもしれない。


ゴクリと唾を飲み込み、そっと体重計に足をのせた。

ピッと電子音が鳴り、デジタル表示が示したのは、五十二という数字。

嘘、三キロも増えてる……。


ショックを受け、体重計の上で固まる私の顔は、さながらムンクの叫びのよう。

今日は悠馬さんに、嬉しい褒め言葉をたくさんもらったけど、それに甘えて安心していては駄目だという気持ちになっていた。


頭に聞こえてくるのは、『副社長と朱梨じゃ、誰がどう見ても釣り合わないでしょ』と笑う、同期たちの声。

それと『子豚ちゃん』という悠馬さんの寝言。

このままの私では、いつか捨てられるという焦りが再燃し、変わりたいという気持ちが芽生えていた。


悠馬さんとお似合いだと、言われてみたい。

絶対に捨てられることはないという、自信を持ちたい。

そのために私は、いい女になろう。


洗面台の鏡の中の自分と目を合わせ、強い決意を胸に、頷いた。

まずはダイエットから始めよう。

脂肪を燃やしまくって、悠馬さんが惚れ直すほどのナイスバディを手に入れてみせる!


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