副社長は束縛ダーリン
ナイスバディを手に入れろ
◇◇◇
誕生日から二週間ほどが過ぎた、七月初旬のこと。
今日は生憎の曇り空でも、私はよかったと感じていた。
少しでも涼しいほうが運動しやすいから。
お昼休みまで、もう少しという時刻、二班の開発室の四つの調理台では、先輩たちがそれぞれに新作コロッケを作っている。
今日の私は、三十三歳、独身男性、林さんのお手伝い。
ゴムベラを持ち、マッシュしたジャガイモに他の具材と調味料を混ぜていて、額には汗が滲んでいた。
隣に並んでパン粉を振るいにかけていた林さんが、その手を止めて、「朱梨ちゃん」と話しかけてくる。
その声には、彼の戸惑いが感じられた。
「はい、なんですか?」
「さっきから、聞いていいものか迷ってたんだけど……どうして足踏みしながら、タネを混ぜるの?」
室内温度が二十三度に設定された開発室で、汗を滲ませていた理由は、コロッケを作りながら運動していたためだ。
誕生日の夜の決意は、まだしっかりと胸の中にある。
悠馬さんと釣り合ういい女になりたい。
そのための第一計画として、スリムな体型を手に入れて見せる。