副社長は束縛ダーリン
デスクワーク中は、空気椅子。立ち仕事のときは足踏みして、カロリー消費に励んでいた私。
その姿は、林さんを戸惑わせていたみたい。
「それって、貧乏ゆすり的なもの?」と、質問を重ねてきた彼に、私は苦笑いして答える。
「癖じゃなくて、ダイエットしてるんです」
「そうなの? 太ってないのに?」
「それが……冬から三キロも増えてたんですよ。コロッケの食べすぎかな〜なんて」
ダイエットとは、摂取カロリーを減らし、消費カロリーを上げること。
先輩たちの新作コロッケの試食を減らしたいところだけど、これも仕事だから難しい。
それに……。
隣の調料台では、泉さんがコロッケを揚げていて、その音と香りに刺激され、口の中に唾が込み上げてくる。
コロッケは大好物だから、ダイエットをしていても食べたくて堪らない。
コロッケを断てば、なんらかの禁断症状が現れそうな気もするし、それはできそうになかった。
だから食べるために、こうして足踏みして、カロリーを消費しているのだ。