副社長は束縛ダーリン

そのようなことを林さんに説明しつつ、混ぜたタネを小判形に成形していると、泉さんが小皿を手に近づいてきた。


「私の新作レシピ、変わり種のコロッケなの。
試食する? それとも太るからやめてーー」


その問いかけが終わらないうちに「食べます!」と即答したら、会話を聞いていた様子の、二班の全員に笑われる。

「本当に痩せる気ある?」と、からかわれもして、恥ずかしい……。


時刻は十二時になり、昼休憩の時間だが、みんなが私の周りに集まってきて、泉さんのコロッケの試食会となる。

俵形のコロッケに、きんぴら風に味付けされたゴボウと人参が刻んで入っていて、白胡麻が香ばしい。

さすが泉さんだと、美味しくペロリと食べ終えてから、自分のお腹に触れた。

やっぱり、割烹着の下の贅肉が気になってしまう。

昼食は、コンビニのサラダだけにしようかな……。


割り箸をくわえて考えていたら、泉さんと目が合った。

知的な眼鏡の奥の瞳が瞬いて、彼女はお皿を差し出してくる。


「後ひとつ残ってるけど、食べる?」

「はい! いただきま……あ、やっぱりやめておきます」

< 110 / 377 >

この作品をシェア

pagetop