副社長は束縛ダーリン

高校生のときに読んでいた少女漫画の中に、こんなヒロインがいた。

才色兼備で文武両道の完璧なヒロインは、男女問わず人気者だった。

いつも余裕のある笑顔を崩さず、なんでも簡単にこなしてしまう彼女は、生まれつき人より優れているのだろうと思わせる。

しかし陰では、イメージを守るために血の滲むような努力をしていたという物語。


陰の努力と、余裕の笑み。

そこに私は憧れる。


いい女は、頑張っている姿を人に見せないものなのよ。

二班のメンバーや同期には、ダイエットとフィットネスクラブ通いの話をしてしまったけれど、悠馬さんには知られたくない。


『朱梨、最近痩せた?
綺麗になった気もするな』

『そんなことないですよ。私は前から、こんな感じです』

『そう? じゃあ……朱梨の魅力に、今まで気づいていなかったということかな。それとも、前よりもっと朱梨に惚れてしまったせいか』

『もう、悠馬さんったら』


これよ、これ。

ダイエットに励む姿を見せずに、変身するのが格好いい。

その上で、悠馬さんから『綺麗になった』という言葉を引き出して見せるわ!


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