副社長は束縛ダーリン

誕生日の夜、悠馬さんは私のお腹の贅肉をつまんで、『こぶ……ちゃ』と寝言を言った。

てっきり“こぶたちゃん”と言われたと思って、ショックを受けた私だが、本当に“こぶ茶”だったのでは……。

よかったとホッとしても、ダイエットの意思は変わらないけれど。


私の左横には泉さんが立っている。

女性なので、悠馬さんは私との距離を気にする素振りは見せない。

しかし、右隣の林さんとの距離には、チラリと測るような視線を投げていた。

その視線をすぐに、会話相手の三上さんに戻したのは、許容範囲だったからだろう。

林さんとは一歩分の距離が開いていて、そのくらいあれば、嫉妬されずに済むようだ。


こぶ茶の話を終えた後、悠馬さんの視線が私に向いた。

ニッコリと微笑んだら、彼も笑みを返してくれて、「ところで」と話しかけられた。


「さっきは廊下にまで笑い声が響いていたね。
楽しそうに、なにを話題にしていたの?」


ギクリとしたのは、その話題がダイエットに関することだったから。

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