副社長は束縛ダーリン
緊張が抜けて、私も林さんもホッと息を吐き出す。
「朱梨ちゃん、俺、まだこの仕事を続けたいから気をつけてよ」
「ご、ごめんなさい」
林さんの文句に、私は肩をすくめる。
悠馬さんに内緒でダイエットするのって、意外と難しいことなのかもしれないと思っていた。
十七時四十五分、就業の時間になり、私は割烹着をショルダーバッグに突っ込むと、「お先に失礼します!」と、誰より先に退社した。
向かった先は、駅前の商業ビルの一階から三階を占める、中規模フィットネスクラブ。
会社から早足で十分ほど歩くと、そこに着き、絶対に痩せてみせると、気合い充分に自動扉から入っていった。
カウンターで受付を済ませ、着替えのためにロッカールームへ。
この時間は空いていて、広いロッカールームには十名ほどの女性の姿しか確認できなかった。
そういえば、退社後に汗を流しにくるOLたちで賑わうのは、十九時過ぎからだと、入会時に教えてもらった覚えがある。