副社長は束縛ダーリン

十分ほど全力で漕いで、もう無理だと思った私は、彼女より先にマシンを降りる。

私は肩で荒い呼吸を繰り返しているけど、彼女はハイスピードでも涼しい顔。

またしても無意味な敗北感を味わって、その後は、腹筋を鍛えるマシンに移動した。


このマシンは、斜めに傾いたベンチに、足を引っかけるところがついただけの単純なもので、人気がないためか、これ一台しか置かれていない。

私もあまりやりたいと思えないマシンだけど、今ばかりはいそいそと、その上に乗った。


一台しかないということは、美人の彼女と競い合う展開にならないだろうし、今度こそ自分のペースでゆっくりと……。

そう思って十五回ほど腹筋したとき、誰かが私の横に立ち、「お客さん」と声をかけてきた。


その人は、さっき転んだ私を助け起こしてくれた若い男性トレーナー。

ぴったりした白いTシャツ越しに、盛り上がった大胸筋と六つに割れた腹筋が見えていて、フィットネスクラブで働く人の体は、やはり違うという印象を受けた。


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