副社長は束縛ダーリン
軟禁?監禁?彼は縛るのがお好き
◇◇◇
夏真っ盛りの七月下旬。
月曜日のお昼の社員食堂は賑わっていて、冷やし中華とトマトのサラダをトレーにのせた私は、空席を探していた。
十二時半というこの時間、六十席ほどが、ほぼ満席で……。
通路をウロウロしていたら、「朱梨、こっち!」と窓際から声がした。
振り向くと、同期で企画部のユッコの姿が見える。
その隣の席が空いたようで、すかさずキープしてくれていた。
ユッコの隣にトレーを置いて着席し、笑顔を向ける。
「ありがとう。助かっちゃった」
ユッコは内緒話をするように「向かいの席も、その前に空いてたんだけど」と囁いて、それから声を普通のトーンに戻した。
「朱梨に気づかなかった。社食のおばちゃんだと思って」
笑いながらユッコがつまんだのは、私の仕事着の割烹着。
脱いできた方がよかったかなと、頭の三角巾だけを外して私は苦笑いする。
開発室内では違和感のない割烹着でも、色んな部署の人が集まる社食では確かに浮いて見える。
視界の端に割烹着姿が映れば、社食のおばちゃんだと思われても仕方がないのかも。