副社長は束縛ダーリン

昨夜ベッドで言われた台詞を思い出し、サラダを食べる手を止めて考え込む。

内心焦りつつも『なにも隠してませんよ』と笑って見せたら、それ以上は追及されなかったから、大丈夫だと思うけれど。


悠馬さんに『なにかおかしい』と感じさせる言動を取っただろうか?と考えていたら、私の向かいの席の人が食べ終えて席を立ち、すぐに別の男性が着席した。

その人は、同期で営業部の長谷部くん。

「お疲れ」と笑顔を向ける彼に挨拶を返し、同期三人での会話が始まった。


「朱梨ちゃん、それだけしか食べないの?
あ、ダイエット中って言ってたっけ」


ライトグレーのスーツと水色のネクタイが似合う、爽やかイケメンの長谷部くんは、ユッコの想い人。

たちまちテンションの上がったユッコが、私の代わりに、張り切って彼に答える。


「そうそう。食事量減らして、フィットネスクラブにも通って、頑張ってるんだって」

「へぇ、本格的だね。でも俺としては痩せてほしくないな。朱梨ちゃんは、そのままで充分にかわいいから」

「長谷部〜、営業部だからってお世辞は言わないの。この子、副社長のためにいい女になるって意気込んでるから、褒めるより、お尻叩いてやって」

「ダイエットしてるのは、副社長のためなんだ……。羨まし……ああ、えーと、朱梨ちゃん。かわいいと言ったのは、お世辞じゃなくて本心だからね」

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