副社長は束縛ダーリン
あれ? なんだろう、この変な感じは。
私は相槌を打つ程度で、会話を弾ませるふたりを食べながら交互に見ている。
ユッコも長谷部くんも笑顔なのに、なぜか笑っているように見えない。
ふたりとも心の中では、違う感情を抱えているような、作り笑顔に見える。
なにかあったのかなと心配しつつも、一番先に食べ終え、ふたりを置いて席を立った。
「先に戻るね。十二時五十分から会議なんだ」
これから、二班の野田さんのレシピが、開発部の全体会議にかけられる。
正確には、その会議は十三時からの始まりで、私は少し前に行って、野田さんのお手伝いをしようと思っていた。
社食を出て、エレベーターホールの横の階段を目指し、廊下を歩いていると、後ろから「朱梨ちゃん!」と呼び止められる。
追ってきたのは長谷部くんで、その手には、私の三角巾が握られていた。
「あ、ごめんね、忘れてた。
届けてくれて、ありがとう」