副社長は束縛ダーリン
きっと私のレシピの参考になると思って誘ってくれた彼に、嫌な断り方をしてしまったかな……。
ダイエットしているから、今はやめておくと言った方がよかっただろうかと気にしつつ、彼の背中が廊下の角を曲がって消えていくのを、エレベーターホールで見送っていた。
そのとき、一階に着いたエレベーターが扉を開け、悠馬さんが降りてきた。
ネイビースーツを今日も素敵に着こなす彼は、女性秘書を伴っている。
それに気づいてヒヤリとした。
長谷部くんと立ち話をしている姿を見られなくてよかった。
やましいことはなくても、悠馬さんなら間違いなく嫉妬する。
危なかったと思う心を隠して、「副社長、お疲れ様です」と挨拶すると、私の前で足を止めた悠馬さんが柔らかく微笑んだ。
「朱梨は社食に行ってたの?」
「はい。今日は冷やし中華を食べました。
これから開発部会議です」
「そうか。後でメールするね」
秘書が後ろに控えているから、恋人としての言動は慎まなければならないのに、悠馬さんったら……。