副社長は束縛ダーリン
軟禁されて、愛されていることを強く感じさせてもらったけれど、彼との差を意識して、釣り合わないと思う気持ちは変わらない。
彼が買ってくれる高級な服を着て、ブランドのバッグにアクセサリーと着飾っても、中身は取り柄のない駄目な私。
このままでいいと言われて、フィットネスクラブには通わせてもらえず、退会させられた。
新作レシピのための食べ歩きには俺が付き合うと言ってくれた彼だけど、忙しい上に、コロッケばかりを食べさせるのは悪い気がして、誘えずにいる。
私は悠馬さんに釣り合ういい女になりたいのに、今はなにを努力していいのか分からない状態だった。
「朱梨? 無理しなくてもいいから。
パン食は休日だけでもーー」
「あ、違うんです! 朝食をパンにすることに困っていたわけじゃなくて。明日からはパンにしますね」
私が変わりたいと言っても、悠馬さんはこのままでいいと言うだけだし、出社の準備をしなければならない今、平行線の議論をしている時間はない。
モヤモヤした気持ちを抱えて、作り笑顔で食卓を片付け始める私。
悠馬さんは私の頭をひと撫でして、自分の分の食器をキッチンに運ぶと、洗面所へと歩き去った。
その背中を見送って、また考え込んでしまう。
悠馬さんに相応しい、素敵な女性になりたいのに、どうすればいいのかな……。