副社長は束縛ダーリン
それから数時間が経ち、もうすぐお昼休みになろうかという時間。
私たち二班のメンバーは、試作品のコロッケとレシピ表を前に、ミーティングテーブルに向かっていた。
今回は私のレシピを評価中。
なんとか班会議にかけられるようなコロッケができて、A4紙八枚のレシピ表にも、このコロッケの魅力をこれでもかというほどに書き込んだ。
でも残念ながら、この先には進めなかった。
班長の三上さんが、締めの言葉を口にする。
「原材料にこだわりすぎて、うちの商品には向かない。冷凍コロッケの適正価格ってもんがあるからね。朱梨ちゃんは、もう少し、原価意識を持った方がいい」
「はい……分かりました」
指摘された通り、今回のコロッケには、仕入れ価格の高いブランド豚を使用した。
プレミア感をアピールしたかったからだ。
そのブランド豚の冷凍トンカツも、うちの商品にあるので、いいと思ったんだけど……。
あっちがよくて、こっちが駄目な理由はなに?
庶民の味方のコロッケは、小売価格が三十円高いというのも、許されないのか……。