副社長は束縛ダーリン

肩を落とした私を見て、三上さんは励ましてくれる。


「今回のレシピは、いい線いってたよ。最近の朱梨ちゃんの頑張りは伝わってる。これからに期待してるからね」

「ありがとうございます……」


班会議は終了となり、私は没をくらったレシピ表を手に、立ち上がった。

隣で同時に立ち上がった泉さんは、私の肩をポンと叩いて「頑張って」とエールをくれてから、自分のデスクへと戻っていく。


頑張りたいんですけど、どんな努力をすれば結果に結びつくのか、分からないんですよ……。


落ちこぼれの言い訳は、心の中だけで。

一年目でレシピを商品化させた優秀な先輩に、そんな低レベルな質問をするのは躊躇われた。


泉さんは自分のデスクでお弁当を広げていて、私は財布だけを割烹着のポケットに入れて、開発室を出た。

向かった先は、一階にある社員食堂。

混み合う社食の券売機に並びながら、着席して食べている社員たちを見回しているのは、人を探しているからだ。

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