副社長は束縛ダーリン
昼休みも走り回っているなんて、営業職は大変だ。
おおむね自分のペースで仕事ができる、私たち開発部員と大違い。
もし私が営業部に所属していたら、どんな感じかな?と、歩きながら考える。
自社の冷凍食品を前に、取引先の人とお茶を飲みつつ談笑している自分の姿を想像し、できそうな気になった。
私は初対面の人と打ち解けるのが早い方だと思う。
歳上にはかわいがってもらえるタイプでもあるし、意外と営業職が向いていたりして……。
コロッケが大好きな私には、今の開発の仕事は天職に思える。
それでも仕事で成果が出せず、焦っているせいか、営業部に移動するのも……と、チラリと考えてしまった。
しかし、営業部にいる長谷部くんの顔が浮かんで、それは無理だとすぐに諦める。
最近、長谷部くんを見かけない。
多分、悠馬さんに怯えて、故意に私を避けているのだろう。
二度と私にちょっかいを出さないと思うけど、同じ部署は考えられない。
営業部に移動したいなんて言い出せば、悠馬さんにまた浮気心を疑われそうだもの。