副社長は束縛ダーリン

冷凍食品業界の各メーカーを一堂に会する販売促進イベントが、都内のコンベンションセンターで、毎年開催されている。

明後日の販促会というのは、時期的にも、それに違いない。

私は参加したことはないけれど、ユッコが言うには、大手卸売業者や、チェーン展開している大規模スーパーマーケットのお偉いさんたちが招待されて、各メーカーがかなり力を入れるイベントだということだ。

さらにユッコは、こうも言っていた。


『商品を上手くアピールできれば、大口契約も夢じゃないのよ。仕事を取ってくるのは、営業部だけじゃないってことを、見せつけてやるわ!』


企画部の一大イベント、販促会。

それに関するなんらかの役割を、引き受ける人がいなくて、困っているような会話に聞こえた。


これだ!と閃いた私は、踵を返して企画部に駆け込み、ミーティング中の五人に大きな声で話しかけた。


「すみません、その仕事、私にやらせてください!」


一斉に振り向いた企画部の人たちが、目を丸くして私を見る。

「あ、朱梨!?」と、ユッコも当然、驚いていた。

< 224 / 377 >

この作品をシェア

pagetop