副社長は束縛ダーリン

「本当にやるの?」と、ユッコが心配そうに聞いてくれて、「ええと、着ぐるみとは思わなくて……」と辞退しようとしたら、企画部の男性のひとりが近くのデスクの受話器を取った。

どこかに内線電話をかけているみたい。


「企画部の鈴木です。開発部、冷凍コロッケ課、二班の班長さんをお願いしたいのですが……」


これはまさか、私を借りるための、許可取りの電話なの!?

マズイと焦り、オロオロするも、彼を止められず。

電話の向こうの三上さんと話し始めた鈴木さんは、簡単な説明をした後に、「ありがとうございます。それでは北さんをお借りします」と受話器を置いてしまった。

それから私に振り向いて、笑顔を浮かべる。


「北さん、許可も取れたし、よろしくね。難しいことはなにもないよ。ユキ丸くんの中で、尻尾を振るように体を動かしてくれたらいいだけだから」


ユッコだけは、『あーあ』と言いたげな呆れた顔して横目で私を見ている。

私がなにかを勘違いして、やりたいと言い出したことを、彼女だけは見抜いているみたい。

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