副社長は束縛ダーリン
子供連れの主婦もいて、そういう人には着ぐるみの受けはいいけれど、仕事で来ている関係者はユキ丸くんに喜んだりしないのに。
ハッキリ言って不必要な役割なのでは……そんな疑問を抱いていたら、四歳くらいに見える男の子を連れた若い女性が近づいてきて、ユッコが「ご試食いかがですか?」と笑顔でコロッケを差し出した。
私は両手を前に揃えて、お尻をフリフリ。
すると男の子は喜んで、左右に揺れるユキ丸くんの尻尾に攻撃し始めた。
その子の母親は、『尻尾だからいいか』と言いたげな顔をしてコロッケを食べるだけ。注意してくれない。
尻尾だけなら痛くないけど、男の子の繰り出すパンチとキックは、尻尾を外して、思いっきり私のお尻に当たっているのに。
ユキ丸くんの頭は軽量プラスチックに布地を張りつけて作られていて、多分ちょっと叩かれたくらいでは痛くないだろう。
それに対して体は、モコモコの綿を詰められた白いつなぎで、衝撃はそれほど緩和されずに体に響いていた。
グルグル回って逃げる私と、楽しそうに追いかける男の子。
ああ、私はなんて情けない……。