副社長は束縛ダーリン
もしや彼女は、望月フーズの関係者?
そして悠馬さんとは、仕事以外でもなんらかの接点があるということなの?
先ほどのふたりの親しげな会話は、悠馬さんの恋人の私としては気になるものだった。
彼の陰から思いっきり着ぐるみの頭をはみ出させて覗き見る私は、ついユキ丸くんでいることを忘れそうになる。
彼女は悠馬さんに好意的な視線を向けて、誘うような色気のある笑みを、赤い唇に浮かべている。
ハイヒールが半歩、彼との距離を詰め、綺麗な指先が彼のスーツの腕に触れそうなのを目にしたら、焦るあまりに悠馬さんの腕にしがみついてしまった。
私の恋人を取らないで……。
「ちょっと、あか……ユキ丸くん、なにしてんのよ!」
ユッコが注意してくれて、ハッと我に返る。
マズイ、正体がバレるかもしれない!と、今度はそのことに慌てて、手を離して飛び退いた。
その後は、自らおかしくしてしまったこの空気をどうにかするべく、下手くそなステップを踏み、かつてフィットネスクラブで習ったエアロビクスのダンスを披露して、尻尾をパタパタと振ってみた。