副社長は束縛ダーリン
すると望月さんはクスクスと笑い、「企業キャラクターの着ぐるみもいいわね。イベントでは客寄せになるもの。うちも作ろうかしら?」と悠馬さんに話しかける。
一方悠馬さんは、ニコリともせずにじっと私……ではなく、ユキ丸くんと視線を合わせたまま。
『やっぱり気づかれた?』と危ぶむ私は着ぐるみの中で冷や汗をかいたが、悠馬さんは小さな溜め息をもらし、フイと視線を逸らした。
「望月、場所を移そうか」
「そうね。久しぶりにゆっくり話したいわ」
私の肩をポンと叩いた悠馬さんは、「ご苦労様」と声をかけ、望月さんと歩き出す。
バレなかったとホッとしたのも束の間で、並んで歩くルックスのよいふたりの後ろ姿を見送っていると、不安がムクムクと湧き上がった。
悠馬さんの隣に私が立つよりずっと、望月さんの方が似合ってる……。
「ユッコ、どうしよう!?」と隣の友に助言を求めてみたけれど、「どうにもならないでしょ」と溜め息交じりに返された。
「あの人、去年も見た。確か望月フーズの社長令嬢だよ。副社長とは大学の同期だって噂も聞いたけど、さっきの会話からすると本当っぽいよね」