副社長は束縛ダーリン

その会話にホッと胸を撫で下ろす。

どうやら仕事関係の話をしているようで、私の危惧する甘い展開には至っていないみたい。

楽しそうな雰囲気でもなく、悠馬さんの声には深刻そうな響きも感じたし、ビジネスの話が急に恋愛絡みの話題に移るとも思えなかった。

ひと安心という思いで、私はユキ丸くんの中で小さな溜め息をつく。

それから見つからないうちに戻ろうと体の向きを変え、ふたりの会話を聞きながらステップを上ろうとした。


「教えてくれてありがとう。早めに対策を立てられて助かるよ」

「あら、どんな対策かしら? ユキヒラ食品がうちに飲み込まれないようにする対策?」

「それも必要だね。望月フーズは怖い存在だよ。うちの冷凍コロッケだけは生かしておいてと、大学同期のよしみで頼んでおこうかな」


そう答えた悠馬さんが、私の知らない大人の笑い方をした後は、突然会話の流れが変わる。

「ユキヒラ食品も欲しいと思ってるわよ。特に悠馬をね……」と、色気のある声で彼女が言ったのだ。


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