副社長は束縛ダーリン

慌てた私は勢いよく振り向いて、バランスを崩しかけ、手すりにしがみついた。

軽量プラスチックと布でできているとはいえ、ユキ丸くんの頭は大きくて重く感じる。

ここで転んではふたりに気づかれてしまうから、気をつけないと。

今度は注意深く、上った分のステップをまた下りて、私は着ぐるみの中で耳をそばだてる。


悠馬さんを欲しいと言った彼女。

その言葉の意味は、ビジネス上のことだけなの? それとも……。


「俺じゃ、望月の力になれないよ」

「あら、優秀なあなたがなにを言うの?
私、学生時代に一度も勝てたことないわ」

「成績とビジネスは違……おっと、やめてくれよ。君とそういう関係にはなれない」


ドクドクと心臓が嫌な音を立てていた。

悠馬さんを求める言葉は、ビジネス上のことではないと、私にもハッキリと理解できた。

悠馬さんは今、彼女に迫られているようだけど、『やめてくれ』って、一体なにをされたの……?


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