副社長は束縛ダーリン
「あなた……フィットネスクラブにいた、あの目障りなちんちくりん!? ユキヒラ食品の社員なの!?」
ちんちくりんって……ひどい言われように傷つきつつ、青ざめていた。
彼女の大胆な言動に驚いて思わず飛び出してしまったけど、正体がバレていいとは思っていなかった。
床にお尻をつけた姿勢で、どうしようとうろたえる。
心臓が早鐘を打ち鳴らし、目を泳がせていたら、悠馬さんが私の腕を取って立ち上がらせ、「怪我はない?」と心配してくれた。
「はい、大丈夫です。あの……ごめんなさい」
小さな声で謝る私に、深い溜め息が降ってくる。
「やっぱり中身は朱梨だったか」
「え?」と聞き返したのは、もっと前から正体に気づいていたような言い方をされたからだ。
悠馬さんに内緒で行動していたつもりでいたのに、どうして分かったの……?
首をかしげる私に彼は教えてくれる。
「GPSを持たせただろう。秘密にしたかったのなら、社に置いてくるべきだったね」
「あ……」
悠馬さんに持たされた腕時計型のGPSは、通勤用のバッグに入れたままで、その存在を忘れていた。
今日もバッグごと、この会場に持ってきてしまい、それを指摘されて気づく私は馬鹿かもしれない。